震度6弱という県内観測史上最大の規模となった福岡西方沖地震。予想もしない、経験もない地震に、県内の防災関係機関や病院、社会福祉施設などはどう対応したのか、関係者に「その時」を聞いた。連絡手段を携帯電話に依存する社会の弱点、情報入手と伝達の見直しの必要性など、今後への教訓もみえる。
■鳥栖消防署長 有馬彰利さん(55)
日曜日で平日よりも20人ほど少ない16人体制だったが、非番の職員が巡回するなどマニュアル通りに対応できた。幸い震度の割に被害が小さく、119番の入電も1件だけだった。天気が良く外出世帯が多かったなどの理由が考えられる。管内には鳥栖スタジアムがあり、毎試合、消防車を一台配置しているが、もし試合日に起こっていたらどうなっていたか、考えさせられる。
■県立病院事務長 池田利彦さん(58)
休みの医師や看護師らも自主的に出てきてくれ、患者への影響はなかった。ただ、連絡先が携帯電話だけの医師もいて、地震と関係ない緊急手術で連絡が取りにくかった。緊急態勢を敷くにも電話が通じなければどうしようもない。また、エレベーター3基が停止し、復帰まで4時間かかった。幸い、閉じこめられた人はいなかったが、業者が来ないと対応できず、対策が必要だ。
■佐賀ガス専務 内海文典さん(55)
震度5強以上で集まるというマニュアルがあり、30分後には社員約20人が駆けつけた。家庭メーターの安全装置作動の問い合わせは約200件、すべて社員が訪問できた。引っ越し時期で人手があり、ガス漏れなど大きな被害がなかったので対応できたが、頻繁な訓練の必要性を感じた。電話がつながらなかった社員もいた。メール活用を検討したい。
■小川島漁協組合長 川口安教さん(45)
小川島漁協は玄界灘(県域)の漁業無線基地となっていて、津波情報はここから約500隻に一斉に伝える。ただ、私たちも警報や注意報はテレビ、ラジオで入手するしかない。今回、7人の組合員は漁などで全員、島を離れていて、結果的に第一波の到着予定とされた時刻までに対応はできなかった。近くで地震が発生した時の緊急連絡態勢などは見直さないといけない。
■寿楽園第一施設サービス部長 山内均さん(33)
老人ホームの管理をしているが、けが人もなく大きな混乱はなかった。(1)負傷者と不在者の確認(2)全員を集める(3)エレベーター、火の使用の中止と、月1回の防災訓練どおりの対応ができた。施設内だけでなく、在宅サービスの人への連絡、避難に備えるための周辺状況把握もでき、阪神大震災や中越地震に職員を派遣したりして課題を学んでいたことが生きた。
■江北小教頭 香月須賀さん(58)
自宅で揺れを感じたが、すぐに子どもたちのことが頭をよぎった。年に1回は地震を想定した避難訓練を実施しているが、本当にこういう規模の地震が起こるとは思っていなかった。甘く考えていたところもあると思う。今までも訓練は相応の規模を想定して真剣にやっていたが、これまで以上に職員へ危機意識を持つよう指導していかなければと思っている。
■ジャスコ佐賀大和店後方統括マネージャー 中越功さん(48)
普段よりお客さまが多い日曜日だったが、売り場に混乱はなく、誘導など特別措置はしなかった。一部の商品が棚から落ちたほか、2階売り場で1カ所、ガラス製防煙板が割れて落下したため、ほかに危険がないか店内をチェックした。新潟でもグループ店が地震被害に遭っており、安全確保の情報は常に各店で共有している。再度、マニュアルを徹底したい。
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