(2)野田培土(諸富町)
農家用培養土を製造販売◇高齢化、環境追い風に


農家の期待にこたえる土を作っていきたい」と話す野田隆嗣社長=諸富町徳富

 ホームセンターなどで売られ、園芸愛好家らの家庭菜園には欠かせない培養土。土づくりの手間を省き、園芸愛好家らに親しまれている。野田培土(諸富町)は、より栄養価を高めた農家用の培養土を製造販売している。

 「農家だけを対象にした培養土を作っているのは国内唯一では」と野田隆嗣社長(56)。「いいものを作れば自然に売り上げが伸びる」と技術に自信を見せる。

 原料は土砂採取場などから運び込まれる「普通の土」。そこに泥炭など、さまざまな栄養素を含んだ五―七種類の土を混ぜ合わせる。ブレンドの割合や種類は、栽培する作物で変える。

 「プロの農家が相手の仕事。失敗は許されないが、その分、やりがいがある」。利用した農家から「良い土だった」と褒められるのが一番うれしいという。

 野田社長が独立開業したのは一九九八(平成十)年。東京農大を卒業後、東京での会社勤めを経て、当時は園芸店などで販売する培養土製造会社の工場長だった。

 「会社勤めでは、なかなか思い通りの仕事はできない。”職人”としての自分の腕を思い切り試したかった」

 農家の高齢化など社会情勢も後押しした。工場には九○年代以降、施設園芸農家を中心に培養土作りの依頼が増えていた。農家が土づくりから農作業を行うのは、時間的にも体力的にも難しくなっていた。「この先、需要は広がる」。独立になんの不安もなかったという。

 読みが当たり、会社設立後、売り上げは毎年20%以上伸びている。二〇〇一年度の売り上げは約九千七百万円。本年度は一億五千万円が目標。取引先は九州一円から群馬県にまで広がった。

   今、力を入れているのは上水道の浄水場に沈殿した泥や、川のしゅんせつ泥を使った培養土作り。作物に害を与える雑菌を加熱処理して有用な菌だけを残し、農業用に再生させる。「捨てるしかなかった土なので原料費はかからないし、環境への取り組みになる」。佐賀平野に広がるクリークが「宝の山」に見えるという。

 また、建設廃材の木材を使った肥料チップ化にも取り組む。実用化のアイデアは自らが主宰する異業種交流グループの雑談の中から生まれた。「専門分野の常識にとらわれていては事業にならない。発想の転換が必要」と異業種交流の利点を強調する。

 次の目標は有機栽培や無農薬栽培に適した土づくり。ハウスの土全部のリサイクルも行いたいという。「キーワードは環境。専門家が不可能ということにこれからも挑戦していきたい」と話す。(石黒 孝)


■メモ 1998年10月創業。栄養価が高い農家専用の培養土の製造販売に取り組む。2001年度の売り上げは9750万円。従業員4人。所在地は佐賀郡諸富町徳富112の2。電話0952(34)8227。

=アイデアの周辺=

〈施設園芸今後も拡大〉

 野田培土が主な取引先と想定する県内施設園芸農家は五千三十一戸(二〇〇〇年)。農林水産省佐賀統計情報事務所が五年ごとに発表する農業センサスによると、ピークの九五年から約二百五十戸減っているが、八〇年からの二十年間では約千八百戸増えた。

 同事務所では九五年と比べ、作付面積が増えていることから「ハウスの集約化が進んでいる」と分析。高齢化が進むことから労力低減と収益アップが図れる施設園芸は、これからも拡大するとみている。

 一方、同じ二十年間で県内の総農家数は二万七千五百戸減少した。ただ、専業農家は二〇〇〇年調査で、ここ三十年間では初めて増加に転じた。


=チェック&アドバイス=

〈県地域産業支援センター・吉原定義さん〉 ◇再利用技術確立が要

 資金ゼロからのスタートだったが、すぐに黒字転換した。社長の経営手腕と需要予測の確かさが光る。培養土はホームセンターなどで売られており、製造業者も多い。農家専用の土づくりには他メーカーの参入もありえるが、野田培土は高い技術で農家の信用を得ているのが強み。先行した利点を生かしている。

 また、これまで埋め立てに使われていたしゅんせつ泥は処分の法規制が予想される。再利用技術確立は、これからの事業展開の要になるだろう。

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