鳥栖商の主戦重野が高低を巧みに投げ分け、愛工大名電の重量打線を5安打1失点に抑えた。立ち上がりから120キロ台のストレートを内外角に散らし、外角のカーブで勝負した。与四死球も2と安定、七回に1点を失ったが、走者を背負っても落ち着いたマウンドさばきで後続を打ち取った。
打線は愛工大の先発・丸山の直球に的を絞り、一回表、先頭・甲斐の初球安打でリズムをつかんだ。三回表、9番日高が右前打で出塁、犠打を絡め二死二塁とし、3番に起用した池上が狙い球の直球を強振。ライナーで左翼手の頭上を越え1点を先制。続く4番中島正も右翼線ぎりぎりに落とし、2点目を奪った。
四回以降も機動力を絡め得点圏に走者を進めたが、球威がある堂上を2度登板させるなど愛工大の継投にかわされた。
10安打で2点。まずい走塁もあったが、鳥栖商は投攻守に持ち味を発揮し、快勝した。
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■ハイライト
=鳥栖商2−1名電=
チーム名の前に必ず「強打の」がついた。4日、愛工大名電との対戦が決まり、鳥栖商・重野倫基は「二けたの被安打を覚悟した」と言う。だが、チームでも1、2を争う強心臓の本音ではない。だから「小細工はするな」―堀江監督の指示を待つまでもなく、ストレートで押すことしか頭になかった。
快調に滑り出した。左打者6人を並べた愛工大名電打線に外角へ逃げる変化球を交ぜながら、直球を勝負球に使った。三回表に2点を先取。逆に重野は三回まで「強打の」愛工大打線を無安打に封じた。堀江監督が描いた通りの試合展開に持ち込んだ。
七回、安打と失策で無死一、二塁。次打者にはストレートの四球を与え、無死満塁。直球が高めに浮き、中盤までの切れがなかった。
内野陣が駆け寄る。顔が引きつる重野に、伝令は「1点はいい。思い切って自分たちのプレーを」。守備位置に戻る前、みんなで手を合わせた。重野は帽子の裏を見た。「仲間を信じて」の6文字。冷静さとともに球威を取り戻した。
犠飛で1点は失ったが、後続を断った。県大会でも見せた「走者を出してから粘り強く」を大舞台でも発揮した。
「もっと打たれると思って投げ続けた」「100%以上の力が出せた。自信になります」。熱投123球。試合を重ねるごとに成長するエース。甲子園でもまだ進化している。
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