○…鳥栖商の捕手富岡拓也が強肩を見せた。五回裏二死一塁。常総学院の一走坂がスタートを切る。「早く走ってこいと思った。冷静に投げられた」。捕球後、素早く立ち上がり、矢のような送球で坂を二塁手前で刺した。遠投100メートル、自慢の肩を甲子園でも証明した。
県大会から投手陣をリードしてきた。重野、城本の持ち味を引き出す巧みな配球でチームの躍進を支えてきた。打撃でも、常総戦九回二死から左前打を放ち、最後の意地を見せた。
「打者とのかけ引きが面白そうだったから」と、捕手は高校から始め、学年とともに大きく成長した。「最高の高校野球生活でした」。甲子園の土を拾い、真っ黒に汚れた手で汗をふいた。
○…鳥栖商主将の池上昌太は試合終了後、ベンチ前で号泣し、ひざをつく城本を笑顔で抱きかかえた。「9人だけじゃない。ベンチ、スタンド一緒になってやれた。一つ勝つごとに、みんなが頼もしくなった」
攻守にソツのない試合運びをする常総学院。「攻撃も守備も”攻めの気持ち”」で臨んだが、先制した直後に逆転を許し、その後もじわじわと引き離される展開。「意表をつく作戦が多かった。やっぱり強かった」。
3回戦での打撃中に腰をひねり、痛みをおして出場。「あそこで打ちたかった」と八回二死一、二塁の好機で遊ゴロに倒れた場面を振り返った後、「高校野球の最後を甲子園で終わることができた。負けた悔しさより、勝つ喜びが味わえた」。最後まで涙を見せず、夢舞台を後にした。
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